幼稚園の時にブーメランしながら夜まで帰らず、家に買えるとパトカーと大泣きする母がいた。
小5の時は友達と親に腹を立てて、久留米のプレハブに立てこもった。
高1の時はプロのミュージシャンになろうと思って東京に行った。 一度も楽器に触れることなく帰ってきた。
結婚し後、商売に失敗し大きな借金を背負った。 ライブの本番をすっぽかしたり、家族からも逃げた。友達も去った。 たぶん人生で一番たくさん泣いた。
たくさん働かせてもらって飛行機で遠くに行けるようになった。 佐渡ヶ島や札幌や沖縄まで自分勝手に飛び回った。 好きな街に部屋を借りた。
商売の恐ろしさを40歳にしてようやく味わい経営者をクビになった。 30歳で一度は自己破産したのにも関わらず、盲目になっていた。 盲目に友達をありがたがり、自分の力を過信した。
昔のお客さんに拾われてまたたくさん働き出した。 家族や友達と離れて暮らすことから始まった。
そうしたら家族や友達に合う為に遠出をするようになった。
僕はなんだか、ゆがんた円を歩いているようだ。
それでもキョロキョロするより目の前の人や出来事をじっと見るようになった。 きっとこれからのほうが歩きにくい道だから。 だから小さな事がとても嬉しくて面白い。
円を一周するにはまだ時間はあるのだろうけれど、残り時間を考えるほど年老いてはいない。 もっと親に優しくなりたい。 もっと強い男になりたい。 きれいな女にほめれたい。
とても残念な能力しかなくても大丈夫なのだ。 自分に絶望するほど自惚れていないし、他人に殺されるほどの魅力も無い。
鈍行で大阪に戻る旅の途中で、車窓に映る自分を見た。 いつもの冴えないオレだったので安心した。
また明日も働いて、歌を歌いに行けるように頑張ろう。 いつか行きたい場所は、いつものどこか。